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━ ALFPフェローとしての経験を振り返り、何が最も貴重な体験でしたか?

我々の出会いは完全に準備されたものであったにも関わらず、仲間と共に過ごし、旅する中で起こった相互作用が、最も貴重でかけがえのない経験でした。
公式には文化交流とよばれる、詳細さと自然発生的な要素を含む、それです。会議場ではなく、むしろ日常生活の中で共有された生産的な意見交換の数々が非常に貴重でした。形式にとらわれない、その瞬間ごとにフェロー間で共有された知見は公には記録されてはいませんが、生活と行動を共にする仲間同士だからこそ分かち合う事が出来ました。
パンフレットやウェブサイトで謳っていること以上に、これらがALFPでの本当の学びであり、心に残る経験です。


━ ALFPでの経験はあなたを変えましたか?

はい。ANVIL出版を立ち上げてから14年後にALFPに参加しました。本の出版にあたっては、批判精神と創造性を兼ね備えた人々と仕事をし、既に学際的で、知的、そして芸術的感性が豊かな人々のサークルのなかで仕事をしていると思っていたのですが、ALFPは、その範囲を文字通り広げてくれました。

常々、アジアの隣人同士で本を販売する方法を見つけたいと思っていました。私が嫌悪し、悲劇的に滑稽だと感じていたのは、アジアという出版業界では、互いにアメリカの書籍を売買しているという事実でした。

アジアの隣国同士が持続的に互いの出版物を売買することは、深い相互理解を育むのみならず、自国文化の真価を再認識することにもつながると思います。この地域で書籍取引に真剣に取り組むことは、「アジア」意識の形成には不可欠です。私はそのための人脈をつくり、少しずつアジアの著作も扱っています。さらに力をいれていきたいと願っていますが、本づくりや流通に影響を与える新技術も考慮し、シフトチェンジをしていかなければいけません。


━ 当時ALFPに参加することの意義は何でしたか?

ALFPでの経験は大変貴重でした。特に本プログラムがアジアのイニシアチブであることに誇りを持っています。このプログラムは、各国で重要な仕事に従事するアジアの人を尊重し、(社会的立場上)個人の自由にはならなくなっていた貴重な時間を寛大に与えてくれました。また、それぞれの国情について学び、それが地域全体に与える影響について意見交換し、反芻する機会を提供してくれました。さらには、思いやりのある世界の創造と、人々の生活の質の向上のために我々が団結し、域内で小さな努力に乗り出すべく背中を押してくれました。

主催者である国際文化会館と国際交流基金は、巧みに計画され管理された空間が交流の質を決定する事を良く理解しており、フェローにとって最適な生活空間や訪問先を選んでくれました*。

*出典:『グローバル化する世界における矛盾と挑戦』(アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム2004報告書)


アンヴィル出版出版事業統括部長
カリーナ・アフリカ・ボラスコ
Karina Africa Bolasco
フィリピン
ボラスコ氏は、「ナショナル・ブックストア」社に10年、自身が創立し、現在フィリピンで最大かつ有数のアンヴィル出版に22年間と、出版業に32年間携わってきた。ナショナル・ブック賞(132冊)や年間最優秀発行人を何度も受賞しているアンヴィル出版は、市民生活を知的に潤す活動への貢献が広く認められていることを物語っている。氏は、1995年には書籍出版と識字普及活動により国に貢献した女性10名の一人に選ばれた。また、氏は、フィリピンの書籍開発委員会の委員長を務めている。自ら執筆したエッセイや詩の数々も作品集として世に出されている。